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活用しよう、数々の生命科学映画の名作を

科学映像館を支える会・理事長 久米川正好

ミクロの生命現象をとらえた記録映画製作者、小林米作氏の(フィルムモノグラフィ)の出版を記念する催しが小林さんのゆかりの地、茅ヶ崎市文化会館で8月13日開かれた。当日、悪天候にもかかわらず、二百数十人の方々が催しに参加された。会場では、にわとりの受精卵から体の各器官が形成されていく様子を描いた「生命誕生」、硬い骨の生きた営みを世界で始めて映像化した「The Bone II」などが上映された。参加者はこれらの作品に息を飲んで見入っていた。

当日の模様は朝日新聞夕刊(8月16日)にまで、論説委員室からの欄で(骨は生きている)と題して紹介された。その中で論説委員の辻さんは「理科離れがいわれる今日、驚きに満ちた作品の数々を生かさぬ手はない」と結んでいる。
まさにその通りで、我々はこれらの名作を活用しない手はないかと常々考えてきた。

小林米作氏 「生命誕生」「ミクロの世界」などは、国際科学映画祭において軒並み最高賞を受賞した。当時、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士、水泳の世界記録を樹立した古橋広之進氏のニュースと同じように、日本の社会に明るさと元気を取り戻したという評価を得た。このカメラマンが小林米作氏であった。

社会に貢献したカメラマンは国語の教科書にも載っていた。したがってこれらの作品は、ドキュメンタリー映画の分野での遺産である。しかも小林さんの作品だけでなく、他の製作者によって作られたアナログ時代の作品は、生命科学の分野だけでも二、三百編以上存在するといわれ、現在でも通用する作品が多いと思う。しかし残念ながら、ほとんど蔵の中にあり活用されていない。

ではこれらの作品はどうすれば生かすことができるのか。そのためにはいくつかの大きな課題が横たわっているようである。大きく分けると以下の2点となる。
(1)フィルム保存と管理
(2)その活用方法
である。

まず保存と管理であるが、これらのフィルムは大多数が35mmのカラーフィルムで撮影され、各プロダクション自身で保存するか、他の保管会社で管理されている。
しかし、これらの作品の保管にも限界がある。

またフィルムはいかに厳密に保管したとしても、劣化をまぬがれない。
その寿命には限度があるともいわれている。幸いにもデジタル化の技術が進歩し、さらに最近ではハイビジョンのデジタル化も可能となってきた。これまでのフィルムをデジタル化し保存すれば当分の間、高品質の状態で保存管理は可能と考えられる。

こうしてデジタル化した作品を、いかに活用するかが次の課題である。
日本に確か3箇所で、生命科学のフィルムが保管されているミュージアムがあると聞く。
しかし、その場所すらまったく知られていない。したがって一般の人はそこを訪れ、これらの作品を見ることはまったくないと考えられる。ではこれらの作品をDVD化したとしても、単価が高くほとんど普及していない。では今後どうすれば?

最近、送受信の環境が整い、ウェブで大型動画を配信できるようになった。
版権もある程度守ることができるらしい。このシステムを使い、また各サイトから発信したものを相互リンクしネット化することによって、多数の人が世界中でどこでも、時間にとらわれず見ることができる環境になりつつある。これを生かすのもひとつの手ではなかろうか。しかもこのシステムは、版権もある程度保持できる。

ちなみに私どもが管理しているホームページ、骨の健康づくり委員会で現在30数本の動画を配信している。また、他のサイトとの相互リンクで、数十本の生命科学映画を見ることができる。先日の朝日新聞の記事でこの内容が紹介され、翌日1200人の方が見られ、以後もアクセスは上昇の一途をたどり、1日当たり100人位の方が利用されている。
こういったウェブによる配信は、今後の一方向を示しているのでは。

最後にもう1つ課題があるようだ。作品の版権である。
この分野では版権がとにかくあいまいである。製作者なのか、企画者なのか、作品によりさまざまである。各分野の人々から得た意見をまとめると、こう言った作品は版権に期限をもうけ、社会に還元するのも一案かもとのこと。その際、安心して管理できる機構が不可欠と考えられる。いずれにせよ、これらの作品を後世に残し活用できる仕組みを期待したい。

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