科学映像館:自然の謎、自然の神秘に触れる感動

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「生命誕生」を見て考えたこと②

 
北海道医療大学歯学部生化学講座教授
田隈 泰信

たくま たいしん
1951年北海道夕張市生まれ
1974年北海道大学理学部生物学科卒業
北海道医療大学歯学部口腔生化学講座教授、理学博士 研究:唾液腺細胞と骨の細胞の分泌機構、 メカニカルストレスとATP分泌に興味をもっています。
   

 「生命誕生」は、受精卵が心臓を中心とした循環系を獲得するまで、細胞の動きだけを追い、映像化したものである。限界に挑んだ、妥協のない映像が全てを語り尽くし、言葉による説明を必要としない。背後に流れる音楽のせいかもしれないが、強いコントラストと重厚な彩色は、正倉院御物に描かれた文様を見ているような、荘厳な印象を与える。「生命誕生」は米作さんが撮影した科学映画の最高傑作というばかりでなく、細胞映画の最高峰の一つであろう。制作当時をリアルタイムに経験された諸先輩にはもう一度じっくりご覧戴き、はじめて見た時の驚きやその当時の発生学の状況を語って戴きたい。一方、今隆盛を極めている分子レベルでの発生生物学にこれから取り組もうとする学生諸君には、自然科学と映像芸術の接点に触れることで、高い研究目標の設定につながることを期待したい。

横道にそれるが、「生命誕生」は1963年、東京オリンピックの前年に制作されている。市川崑監督の「東京オリンピック」は、極めて芸術性の高い記録映画であった。クローズアップと高速度撮影によって、アスリートの緊張感は見るものを切なくするほどに伝わってきた。その影響があまりにも大きかったせいで、テレビのスポーツ中継や歌番組から全体像が失われ、映るのは選手と歌手の顔ばかりという状況が続いた。今でも不自然、不必要なクローズアップが多過ぎる。

科学映像館が設立され、高画質の科学映画を、ネット上でいつでも自由に見られる時代が到来した。国民の聴視料で運営されているNHKアーカイブスにも、貴重な科学映像が沢山保存されているはずだが,まだ自由に見ることはできない。版権その他の障害を乗り越えて、非営利目的で使用する場合には、学術的な映像データベースに自由にアクセスできる日が一日も早く来ることを願っている。

原っぱでガキ大将と遊ばないと社会性が身に付かないのではないかと危惧されながら大都会で育った子供たちも既に立派な中年である。ファミコンで育った子供たちも社会に出て活躍している。ネットの科学映像を自由に見て育つ子供たちから、どんな素晴らしい発想が生まれるか期待したい。


 

 

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