荒川の「マヤ床作り」

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作品概要

制作・企画:荒川流域ネットワーク
2007年 カラー 18分20秒

2007年、秩父市を流れる荒川との合流点上流の横瀬川で、NPO法人秩父の環境を考える会が主催するウグイ(ハヤ)のマヤ床(産卵床)作りが行われた。この事業は、荒川の淡水魚の資源保護という観点からの保全活動として秩父漁業協同組合の全面的な協力を得て実施されたものである。

 マヤ床作りは本来、「マヤ漁」という伝統的な漁法に用いられ、産卵場所を求めて遡上したウグイをマヤ床に呼び込み、投網で捕獲するために作られる。この時期のウグイは美味しく、以前はこの方法で漁が盛んに行われていたという。その伝統的な漁法であるマヤ床作りを映像として残したものである。

 秩父地方では、ウグイのことを一般的には「ザコ」と呼ぶが、4月水温が10℃を越した頃、春の産卵期を迎え、腹に赤い婚姻色の線がでたウグイをマヤという。

 しかし、50年ほど前からコンクリートの材料として川から大量に砂利が持ち出され岩盤がむき出しになり、水量も人為的にコントロールされ、水質汚染などとあいまって川底の石は有機物が付着したままになり、ウグイが産卵しづらい環境になった。

 また、カワウが保護により数が増え、ウグイが過剰に捕食されたことなどが原因で、個体数が減少した。このことを受けて「ウグイを増やして本来の荒川に戻そう」と保護活動が始まった。

 マヤ床は、魚卵が付きやすいよう河原の石や藻などの付いていないきれいな川底の石を用いて作られる。川の中ほどに深さ約70センチの穴を円形に掘り、その上流部分に直径約20センチの石を並べ水流を穏やかにする。穴の周囲には直径10~20センチほどの石、中には砂利を敷きつめて産卵床を完成させる。細かい所は、家ごと伝統的な作り方があるそうだ。

 この日は、横瀬川で約10人の同会員や同組合員らが協力してマヤ床を作った。降雨により水量が倍になった川に入り通常時の水深を計算して、足で砂利を踏み固めて石の状態や川底の段差などを確認しながら完成させた。

 漁協の人の話では、「2~3日中には産卵が始まる」ということだったが、翌日の朝には、待っていたように20㎝を超える大型のウグイが大量に集まってきたそうで、今回の「マヤ床作り」は成功だったようだ。1尾が産卵する卵の数は平均1500個程で、数十万尾の稚魚の誕生が期待される。

 「マヤ床作り」は昔の漁法を地域の人たちの協力のもと、資源保護の手法に利用した例である。(非営利活動法人荒川流域ネットワーク代表理事 鈴木勝行)



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