ムーン・ジェリー ミズクラゲのライフサイクル(フルHD)

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教育動物東京シネマ新社
通常版

受賞歴

国際科学映画協会ヴェネチア大会名誉賞
ANZAAS国際科学映画エキジビション特別賞
その他内外で多くの賞

作品概要

企画・制作:東京シネマ新社/下中記念財団EC日本アーカイブズ
1977年 原版:16mmカラーネガ 33分
スーパー2K版

この作品はもっとも代表的な鉢クラゲ類のミズクラゲのライフサイクルを、克明な顕微鏡・接写微速度撮影によって映像化したものです。
一般によく紹介される世代交代のパタ一ンだけではない、若いポリプから直接プラヌラ幼生が出芽する例も克明に記録しています。

学術指導

東北大学理学部浅虫臨海実験所 柿沼好子理博

協力

福井県水産試験場 安田徹 水博
福井県高浜町音海 児玉亮太郎氏ご一家
東北大学浅虫臨海実験所
弘前大学深浦臨海実習所
お茶の水大学館山臨海実験所
岡山大学玉野臨海実験所

助成

放送文化基金(放送に関する国際協力)

スタッフ

企画・製作:岡田桑三
監督:岡田一男
撮影:谷口常也、草間道則
演出助手:後藤雅毅
水中撮影:大津善彦、西山豊、本郷淳

補足 東京シネマ新社 岡田一男氏より

久米川正好理事長から、NPO法人科学映像館のネット配信1000本達成記念に相応しい作品についてご相談があったとき、私は「ムーン・ジェリー ミズクラゲのライフサイクル」を推させていただいた。長年科学映像製作に携わってきた者として、最大の傑作ではないとしても、自分の生涯の中で最も重要な意味を持っている作品であることが理由である。岡田一男とカメラマンの谷口常也は、前作、「マリン・フラワーズ 腔腸動物の生活圏」が、父、岡田桑三の生涯の大作であり、表面的には大きな成果が上がっていても、指導学者と掲げた目標を果たせていないと感じていた。旧来の東京シネマから東京シネマ新社へと、会社組織は変わっても、新しい理念を持った製作集団への脱皮は、果たせていないと感じていた。

そこで、新しいスタッフ編成、新しい機材編成で、新たな取り組みを始めることを、「マリン・フラワーズ」の撮影終了時から取り組んだ。工作機械である中古の小型フライス盤を入手・改造し、ミクロ・マクロ撮影用のオプチカルベンチとし、短時間で日本全国どこへも運搬移動可能なシステムとした。また顕微鏡光学系をドイツ・ライツ社のものからツァイス社のものに切替え、プランクトン観察用に開発された小型倒立顕微鏡インヴェルトスコープDとDIC=ノマルスキー微分干渉コンデンサーを導入した。西独ゲッティンゲンの科学映画研究所のハンス=へニング・ホイナートらのヨーロパ随一の生きたままの生体試料顕鏡技術のノウハウを入手して、戦力とした。

岡田も谷口も30台半ばの若者だった。東北大学浅虫臨海実験所で柿沼好子理博の指導の下、長期撮影の体制を組み、カメラマンの谷口とチーフ助手の草間道則は、昼夜を問わぬ撮影を続けた。岡田は、金曜の夜行で青森に向かい、撮影に参加し、月曜の夜行で東京に戻り、火曜の朝、そのまま上野駅から下中記念財団EC日本アーカイブズの麹町4番町の事務所に出所、撮影フィルムの現像手配などを行った。金曜夕方まで東京で働き、夜行で青森へ向かうローテーションを数か月繰り返した。臨海実験所の管理上、あまりの長期滞在が問題となると、日本海側の深浦にある、弘前大学の臨界実習所で撮影を継続し、さらに日本海側若狭湾のミズクラゲ大量発生を求めて、福井県音海の漁師宅で納屋を借りて長期にわたる微速度撮影を続けた。かつて「ミクロの世界」において72時間の微速度撮影を大事の様に解説しているが、この作品では数日間の繰返しどころか、2週間ぶっ続けでの撮影を行っている。

従来、研究者は、ミズクラゲの成体のクラゲからプラヌラ幼生を得て、そこから付着期のポリプに成長させてきた。このため自然の海中では、どこにミズクラゲのポリプはいるのか、確たる情報は無かった。この撮影の当時、関西電力高浜原電の排水口となっている内浦湾は、広大な貯木場になっていて、巨大な丸太を留めるブイが沢山浮かんでいた。毎朝、スタッフは採水と元気な試料をえるため、湾内をスノーケリングしたり、時には、スキューバ潜水で10数メートルの砂地の海底まで潜っていたが、ミズクラゲのポリプが、海面に浮かぶブイの底に太陽光を避けるようにして密集するコロニーを見つけた。この作品では、従来からの定番の図式通りのライフサイクルでなくプラヌラから16本触手のポリプをつくることなくエフィラ幼生が直接つくられる例を克明に紹介しているが、これは長期にわたって飼育された試料からではなく、自然な海で得た成体からのプラヌラ幼生によっている。

ミズクラゲは温度処理でストロビラ形成を誘発しエフィラ幼生を得ることができるが、東京シネマ新社にもポリプを持ち帰り飼育していた。「ムーン・ジェリー」は放送文化基金の助成を受けたが、自主制作でスポンサーは無かった。そこで、並行して他の企画も積極的に取り組んだ。そちらの地方ロケが始まると、ミズクラゲのポリプやエフィラ幼生もタンクに入れて帯同した。予備の海水や、クラゲの餌となるブラインシュリンプも海水に空気を送り込んで孵化を促しながら、ロケ車を走らせた。時に餌が足りず、勝手も知れぬ冬の海岸ばたで、流れ藻を集め、中に潜むプランクトンを必死で集めたりした。

現在配信中の同作品が、従来の科学映像館の配信作品のデジタルデータ抽出のスタンダードとなってきた英国ランクシンテル社のFSS(フライイング・スポット・スキャナー)の日本導入以前に得た画像データによっていた。この作品が製作された時代、殆どのミクロ・マクロ撮影を要する科学映像は予算さえあれば、35mm撮影で行い。ビデオ画像は、その16mmポジプリントからのテレシネで行うのが常道であった。経済的負担を軽くするため16mm撮影とし、フィルム現像は従来よりのイマジカで行ったが、より良いビデオ画像を得るため、ソニーPCLの新たに開発した撮像管方式のテレシネ装置で直接ネガ原版からビデオ画像を取得した。当時として革命的な画質であったのだが、2010年代の数世代を経たFSSテレシネの画像と比較するとかなりの見劣りは、否めなかった。

ここ数年来、東京光音では、従来のFSSから新たなデジタルスキャナーへの切り替えが進み、第一段階のスキャンは、フィルムの1コマ1コマに対応するローデータを先ず作成し、第2段階でエンコードや色補正などを行う方式への劇的な移行が始まっている。いささか賽の河原的状況だが、従来のFSSテレシネでは引き出しえなかった良好な画像データを抽出していくことが、新たな課題となってきたのだ。今回の配信は、技術的にも、1000本配信を期しての新たな出発を象徴している。

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