科学映画の活用法

微速度撮影について

< 金子文雄 >

小林氏

ライツの顕微鏡とアリフレックスの微速度カメラで撮影する小林氏(1958年)

私達が劇場で観る普通の映画は、毎秒24コマの速度で撮影されたフィルムを同じ速度で映写することで現実の動きを忠実に再現していますが、この関係性を崩すと、現実の時間と異なる映像表現ができるようになります。顕微鏡で見る世界を記録する際にしばしば使われる「コマ撮り」や「微速度撮影」も、この撮影速度と映写速度の関係を利用して現実の時間の流れとは違った世界を見る方法の1つです。

一般に映写機のフィルム走行速度は固定されているので、撮影の時に速度を変えて記録します。

「コマ撮り」と「微速度撮影」は特殊撮影に分類される技術で「コマ撮り」はフィルム上に1駒ずつ映像を記録、あるいはビデオ信号を1フレームずつ録画していく撮影技術に重点をおいた用語、「微速度撮影」は非常にゆっくりと進行する現象をコマ撮りの技術で時間軸を圧縮し、私達に理解しやすい形で提示する撮影技法に重点をおいた用語と考えられます。いずれも、日常感覚では捉えにくい世界を表現するために使われます。

微速度映画撮影カメラ

微速度映画撮影カメラ

たとえば、1時間の現象を30秒で見たい場合には、1時間=3,600秒を毎秒24コマ×30秒間=720コマで割った5秒のインターバルで撮影するという計算になりますが、実際にはインターバルの設定は被写体の動きを違和感なく表現することが優先されます。

また、純粋な記録であれば、1シーンがどんなに長くなってもかまわないかもしれませんが、作品の枠の中では、1シーンの長さ、被写体の動き、撮影レンズの拡大倍率も考慮してインターバル時間を設定します。

経験的に、細胞が生きて動いていることを表現するためには3~10秒ぐらいのインターバルを基本にしますが、現象を長く追いかける必要がある場合には細胞の動きを犠牲にしても、インターバルを長くして撮影することがあります。

ページの先頭へ戻る