科学映画との出会い

「The Bone」&「The Bone II」との出会い

< プロフィール >
羽毛田慈之

1956年3月生まれ、長野県出身。
北海道大学大学院理学研究科博士課程中退。
1983年、城西歯科大学(現明海大学歯学部)
助手として就職。2002年、久米川正好教授の
後を引き継いで、明海大学歯学部口腔解剖学
第一講座の教授に就任、現在に至る。

明海大学歯学部教授・羽毛田慈之

明海大学歯学部教授
羽毛田慈之

久米川先生らが「科学映像館を支える会」を設立されるとのこと。
そこで改めて「The Bone」&「The Bone II」を見直してみました。初めて私が「The Bone」を観たのは、私が久米川先生の教室に就職して間もない時でありました。

それまで、北の片田舎でバクテリア相手に研究をしてきた身には骨のことはチンプンカンプン。「The Bone」を観ても久米川先生の手前「すごいですね」というくらいであったかと思います。私の凡才故でありましょう。

しかし、幾度となく観ていくと、その迫力その美しさに圧倒され始め、私の骨の研究が進むにつれて、映像の中に数多くのまだ未知の真理が解き明かされるのを密かに待っているのが、徐々に見え始めました。そして「The Bone II」ではその撮影現場をつぶさに見る機会を得ることができました。

すでにご高齢になられていた監督の小林米作さんをはじめ、若いスタッフが昼夜と惜しまず、ひたすら顕微鏡とカメラに格闘している姿はまさに野戦での兵士そのものでありました。その執念こそがあの迫力、あの美を生むのだと実感しました。

今でも久米川先生と小林さんとのやりとりを語った言葉を思い出します。「押し付けがましい科学映像は良くない。あるがままを淡々と、しかも粘り強く写し出した科学映像こそ美しい。その映像の中から何を感じ取るかは科学者次第だ」と。

BONE II

BONE II

現在、骨の研究は凄まじい勢いで分子レベルで解明が進んでおります。しかし、改めて「The Bone」&「The Bone II」を観てみると、それら解明された多くの事柄は今から20年余前に作られた「The Bone」&「The Bone II」の中にすでに折り込まれているのです。

映像フィルムは、年月とともに劣化して行きます。
文化遺産とも言える数多くの科学映像は、今失われる危機にあります。
これらの科学映像フィルムをデジタル化し、永遠に残すことは我々の責務と言えるでしょう。そして、多くの科学映像は遺産ではなく、今でも現役であることを忘れてはいけないことなのです。

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